2020年代の太陽圏:多様な観測体制の確立と太陽圏システム科学の推進
2020年代は内部太陽圏探査に多数の衛星が展開していく、太陽圏システム科学推進にとって貴重な探査機会である。これらの一連の観測を有機的につなげ、太陽圏システムとしての研究を推進していくことが重要となる。この中で日本の衛星は国際的なHeliosphere Observatoryの中でも、各領域の重要な観測を担い太陽・太陽大気/惑星間空間/ジオスペース(月)と、太陽からの一連のつながりの各ポイントを観測している。
衛星観測に限らず地上からの電波観測にもとづく太陽風観測(IPS)や、太陽圏のグローバルモデリングとの連携によって、太陽面と太陽風構造の繋がり、地球や火星軌道への影響など、包括的な太陽圏研究が求められる。
また月ゲートウェイや火星探査など宇宙天気研究のニーズがジオスペースの外へも拡大し、SEPやGCRの研究の重要性が高まっていることが予想されるが、BepiColomboやMMXはクルージング中にSEPを太陽圏の様々な場所で計測する重要な観測機会を担う。
太陽圏サイエンスセンター計画
宇宙科学の主要研究分野の1つである太陽圏システム科学分野(STP)の2020年代は、日本の"ひので"、"Geotail"、"あらせ"、"みお"、"SOLAR-C" をはじめ 世界的にも NASA Parker Solar Probe や ESA Solar Orbiter等、太陽圏の観測が充実し、太陽風加速から太陽風ダイナミクスまで太陽科学分野とSTP分野が強く協力して、太陽圏システムを理解しようという動きが加速している。 太陽科学とSTP分野の融合した太陽圏システム科学研究が急速に進みつつある世界の研究の流れに添い、日本でもこれらのミッションが同時に観測を実施する好機を活かすべく、太陽・STP分野の研究者が衛星・探査機ミッションと地上観測、数値シミュレーション・モデリングとの連携を強化し相互のデータを使って融合研究を展開することを可能とするデータ利用環境の整備が求められている。
太陽圏サイエンスセンターの目的
- 太陽圏システム科学を推進するための基盤構築
- 太陽およびSTP分野の双方の研究者がシームレスに利用できる、太陽圏システム科学として付加価値の付いたデータプロダクトを整備する。 また太陽およびSTP分野間を横断した融合研究を可能とする、太陽圏システム科学の統合データ解析研究環境を整備する。
- データ標準化に向けた取り組み
- 太陽圏システム科学の視点や最新の情報技術へ対応の必要性からデータ標準化の動きが活発化する中で、国際的なデータ標準化活動にキャッチアップし貢献していく。
- 異なる観測、シミュレーションを組み合わせた手法による成果創出の推進
- 科学戦略にもとづく各探査機、地上観測の連携観測キャンペーンの立案と実施、各探査機、地上観測、数値シミュレーションを組み合わせた融合研究を推進する。
- 将来の人材育成
- 太陽圏システム科学分野として、従来の太陽分野とSTP分野の領域を超えた人材育成を促進する。
- 太陽圏システム科学の持続的な推進基盤整備
- 2030年代の太陽圏システム科学を持続的に推進するためのサイエンスセンター機能(高次データおよびデータ解析環境の維持・発展、科学戦略立案、連携観測企画)の技術的・科学的基盤を確立していく。